結婚10周年の記念旅行、朝6時発のフライトに合わせて、田中夫妻はカーシェアサービス「シェアモビ」で車を予約していた。利用時間は6時間、片道空港送迎、料金は3,850円。前日の夜、アプリで予約完了の画面を確認したときには、何の問題もなかった。旅行先は10年前に新婚旅行で訪れた沖縄で、今回はその思い出をたどる旅にしようと、半年前から少しずつ計画を立てていた。
当日の朝6時、指定された駐車区画に着くと、すでにひとりの男性が車の前に立っていた。「予約番号、これで合ってますよね」と、男性がスマートフォンの画面を見せてきた。表示されていたのは、田中が予約したものと完全に一致する番号だった。田中の妻もすぐに自分のアプリを開いたが、そこにも同じ予約番号、同じ車両ナンバーが表示されていた。
車は1台しかない。予約は明らかに二重になっていた。田中の妻は、スーツケースを引きながら、困惑した表情で二つの画面を見比べていた。「予約番号も、車のナンバーも、全部同じなんですけど……」と、思わず声が震えた。
運営会社のサポートセンターに電話をかけたが、早朝6時はまだ自動音声の案内だけで、有人窓口の対応時間外だった。
表示された案内には「営業時間は午前7時からとなります」とだけ流れ、田中は思わず舌打ちしそうになった。男性は「自分が先にここに来た」と、すでに車のロック解除を試みようとしていた。田中は思わず、その手を止めるように声をかけた。「すみません、うちも今日どうしても空港に行かないといけなくて」
男性も困った様子で、事情を話し始めた。
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