結婚式の招待客リストを、母と一緒に最終確認していたときだった。
腹違いの兄の名前を見つけた瞬間、母の表情が変わった。
「あの人は呼ばないで」
理由は聞かせてもらえなかった。私はその名前を、静かにリストから消した。
式当日、受付で名簿を確認していると、見覚えのある男性が立っていた。
腹違いの兄だった。
手には、大きな花束を抱えていた。
「呼ばれてないのは分かってる。ただ、渡したかっただけなんだ」
どう対応すればいいのか分からず、私は母を呼びに行った。
会場の入口で、母と兄は少しの間、向き合ったまま立っていた。
先に口を開いたのは、母だった。
「……大きくなったね」
兄は、花束を差し出しながら、小さく頭を下げた。
「今日だけ、少し離れたところから見させてもらってもいいですか」
母は何も答えなかったが、目には涙が浮かんでいた。
結局その日、兄は披露宴には入らず、受付近くの椅子に静かに座っていた。
母は式の合間に、一度だけそばに行き、二言三言、言葉を交わしていた。
何を話したのかは、今も聞いていない。