妻が買い物に出たあと、私は台所を片づけていた。
炊飯器に残っていたご飯を容器へ移し、内釜を洗おうと流し台へ運んだ。
普段なら両手で持つのだが、その日は片手にしゃもじを持ったままだった。
水で濡れた指から、内釜がするりと滑った。
「パキン」
金属がへこむような音ではなかった。
足元を見ると、厚みのある黒い内釜が2つに割れていた。
炊飯器本体は無事だが、これではご飯を炊けない。
しかも、この炊飯器を選んだのは妻だった。
いくつもの商品を比較し、ようやく決めたお気に入りだ。
「この内釜、割れ物だから落とさないでね」
そう注意されていたことも思い出した。
「終わった……」
私は割れた内釜を見ながら、妻が帰宅したときの反応を想像した。
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