商店街の一角にある小さな生活雑貨店で、長年働いてきた67歳の女性店員がいた。
彼女は品物を売るだけの人ではなかった。常連客の顔と名前だけでなく、贈り物の裏にある事情まで覚えていた。孫の入学祝いを探す客には靴下と鉛筆を勧め、法事の品を探す客には年配向けの焼き菓子を勧めた。入院中の姉への見舞い品を探して困っていた女性には、会ったこともない相手の心情まで想像して花柄の膝掛けを勧めた。
その日の売上は、特売もないのに店内トップだった。返品はゼロだった。
しかし、そんな彼女のやり方を、新しく着任した31歳の店長は「古い」としか見なかった。
店長は本部の方針として、続的な接客をなくし「誰が立っても同じ品質」にすることを掲げた。おすすめ文句は3種類に固定し、放送は時間短縮優先、電話での取り置きは原則禁止、会話は1人3分までという指示が次々と貼り出された。
彼女は法事の相談や高齢客への対応が難しくなると訴えたが、店長は「感覚でやる時代は終わりました」と取り合わなかった。
そして朝礼の場で、店長は彼女に向かってこう言い放った。
「正直に言います。あなたみたいな昔ながらのやり方が、この店を古くしているんです」
ベテランだからといって例外は作らない、本日で上がってください。突然の通告だった。彼女は何も言い返さず、名札を外して一礼し、店を去った。
翌日から、店の空気は変わった。
いつも来ていた常連客が、担当を尋ねても「本日より担当制は廃止しております」としか答えられない新人スタッフに落胆し、そのまま帰っていった。法事の相談に来た客も、画一的な受け答えに「今日はやめておくよ」と言って店を後にした。
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