大晦日の前日、仕事を終えて帰宅した俺は、台所の異様な静けさに足を止めた。
いつもなら妻の結衣が正月料理の仕込みを始め、出汁の香りや煮物の湯気が家中に広がっている時間だった。
だが、その日の冷蔵庫は空だった。
冷凍庫も、野菜室も、保冷バッグも、すべて見事なほど何もない。
結衣は買い物リストを握りしめたまま、台所に立ち尽くしていた。
そこへ奥の部屋から、母が平然と現れた。
「正月の食材なら、全部たかしの家へ持って行ったわよ」
俺は一瞬、意味が分からなかった。
弟のたかしは秋に結婚したばかりで、弟嫁の舞子の実家の親戚が正月に集まるらしい。
母は悪びれもせず言った。
「向こうは新婚なのよ。舞子さんが恥をかいたらかわいそうでしょう」
かわいそう。
その一言が、結衣の数週間分の準備を踏みにじった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=kOD_EV09hfc&t=83s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]