「奨学金で大学なんて考える暇があるなら働け」
父の冷たい声は、今でも耳に残っている。
当時、俺――今井一馬には妹のことはがいた。ことはは重い病気を患い、長期入院が決まっていた。家族にとって一大事だった。
「バイト代はちゃんと家に入れるから」
俺がそう言っても、父は首を横に振った。
「わがままを言うな。働いて妹の治療費を出せ」
母も何も言わなかった。
結局、俺は大学進学を諦め、高校卒業後すぐに就職した。給料の良い会社を選び、実家から離れた街で一人暮らしを始めた。
理由はただ一つ。
ことはを助けるためだった。
毎月、給料の大半を実家へ送った。生活は決して楽ではなかった。朝早くから働き、夜遅く帰る毎日。
そんな俺の唯一の楽しみは、趣味で書いていたウェブ小説だった。
そして三年後。
ことはが退院した頃、残業帰りの俺にメッセージが届いた。
『毎日楽しそうね』
『私はやっと退院できたのに、お兄ちゃんは何もしてくれなかったよね』
その文章には、明らかな棘があった。
俺は信じられなかった。
毎月送っていた治療費のことを、ことはは知らなかったのだ。
急いで父に電話をした。
「父さん、ことはは俺が治療費を払っていたことを知らないみたいだけど……」
すると父は笑った。
「ああ、治療費は俺たちが出したことにしている」
「少なくとも、ことははそう思っている」
さらに父は続けた。
「退院したからって仕送りをやめるなよ」
その瞬間、何かが壊れた。
俺は家族との関係をほとんど断った。
それから数年。
俺の人生は大きく変わった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=dj7yIH0duOk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]