30歳の女性が救急搬送されたのは、夕食後のことだった。
食べたものは、お好み焼き。
特別珍しい料理ではない。
本人もこれまで何度も食べたことがあり、アレルギーを感じたことは一度もなかった。
しかし、その日は違った。
食後しばらくして、腕や足に強いかゆみが出始めた。
最初は「少し赤くなっただけ」と思っていた。
ところが、時間が経つにつれて症状は広がった。
全身にじんましん。
喉の違和感。
そして息苦しさ。
家族が異変に気づき、急いで病院へ連絡した。
診察した医師は、症状を見るなり判断した。
「アナフィラキシーの可能性があります」
すぐに治療が開始された。
アドレナリン投与によって症状は落ち着いたが、次に重要になるのは原因の特定だった。
「お好み焼きなら、小麦でしょうか。それともエビでしょうか」
研修医はまず一般的な可能性を考えた。
しかし、女性から詳しく話を聞いていくと、少しずつ疑問が出てきた。
「パンは普段食べますか?」
「はい。よく食べます」
「エビ料理は?」
「好きなので、よく食べます」
小麦もエビも、今まで問題なく食べていた。
さらに、
「食後に運動しましたか?」
と確認すると、
「いいえ。家で普通に過ごしていました」
との答え。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性も低い。
研修医は頭を抱えた。
「じゃあ、お好み焼き自体のアレルギー?」
そう考えて確認すると、
「お好み焼きは大好きです。お店でもよく食べます」
という返答。
しかし女性は、その後に小さな声で続けた。
「でも……今日はいつもと違いました」
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