「83歳の母が、名古屋駅で動けなくなった」
その連絡を受けた瞬間、私は血の気が引いた。
母はその日、ひとりで電車に乗って出かけていた。
ところが午後、激しい雨の影響で名鉄線が運転見合わせ。
母は名古屋駅で完全に足止めされてしまった。
ニュースを見た私は、慌てて母にメッセージを送った。
「ニュースで名鉄線の運転見合わせって見た。大丈夫?」
しばらくして返信が来た。
「津島方面が雨ひどいらしくて、名古屋駅で足止め。心配しないでね。そのうち動くでしょう」
83歳なのに、心配している私を逆に安心させようとしている。
その文章を読んだら、余計に泣きそうになった。
「電車が止まるとか、もっと考えればよかった」
「送ればよかった。本当にごめんね」
そう送ると、母はまた、
「大丈夫、大丈夫」
と返してきた。
でも、本当に大丈夫なのか。
駅は混雑しているはず。
ずっと立っていたら足も痛くなる。
スマホの充電だって心配だ。
私は、
「座れてる?せめて座っててね」
と送った。
少しして母から返信。
「お姉ちゃんに送ってもらったら、お母さんがお姉ちゃんのこと心配だよ。
大丈夫、大丈夫」
こんな時まで娘の心配。
胸がぎゅっとなった。
さらに17時4分。
母から、突然こんなメッセージが来た。
「停まっている電車に、横浜流星君の写真が貼ってあるから、イケメンだなーと見ているよ」
思わず泣きながら笑ってしまった。
83歳の母は、足止めされている名古屋駅で、ちゃんと自分なりに気持ちを落ち着かせようとしていた。
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