「え、これ普通に公道走ってるの?」
信号待ちで前に止まった1台のSUVを見て、思わず二度見した。
最初は、ちょっと変わったカスタム車だと思った。
ところが、よく見ると妙なところが多い。
車体の一部には黒いテープのようなものが貼られている。
エンブレムらしき場所も隠されている。
後ろ姿はかなり完成しているのに、メーカー名や車名をわざと分からなくしているようにも見えた。
「これ、もしかして発売前のテスト車両?」
そう思った瞬間、一気に気になり始めた。
これまで写真やネット上の情報で、開発中らしき車を見ることはあった。
でも、実際に自分の目の前で公道を走っているのを見るのは初めてだった。
しかも想像していたより普通だ。
派手な迷彩柄で車体全部を覆っているわけでもない。
荷物を運ぶトラックや一般車に混ざって、何事もないように信号待ちしている。
「意外と隠してないんだな……」
車体の形。
リアランプ。
バンパー。
ルーフまわり。
全体のシルエットはかなりはっきり見える。
隠されているのは、ブランドを特定しやすい部分が中心に見えた。
信号が青になる。
前の車は静かに発進した。
私は無理に追いかけたりせず、そのまま後ろを走った。
すると次の交差点で、右側を走っていたトラックの運転手まで、そのSUVをじっと見ている。
やっぱり気になる人には分かるらしい。
その後、渋滞で再び車列が止まった。
近くの車からスマホを向けている人もいた。
けれど運転している側は、周囲の視線など気にしていない様子だった。
「こういう車って、秘密だらけだと思ってた」
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