「これ、事故車じゃないよね……?」
朝、雨の中を車で通りかかった時だった。
道路脇の側溝に、白いSUVが大きく傾いた状態で止まっていた。
左側のタイヤは完全に溝へ落ち、車体は斜め。
エンジンが動いている様子はない。
ハザードも点いていない。
そして何より不気味だったのが、
運転席にも助手席にも誰もいなかったこと。
最初は、
「脱輪して、レッカーを呼びに行ったのかな」
と思った。
だから、そのまま通り過ぎた。
ところが数時間後。
同じ道をもう一度通ると、
まだある。
位置も変わっていない。
雨に濡れたまま、朝とまったく同じ状態だった。
「さすがに変じゃない?」
周囲を見渡しても、人影はない。
近くに事故の当事者らしい人もいない。
警察車両も見当たらない。
私は少し離れた安全な場所に車を停め、警察へ連絡した。
「道路脇に車が落ちた状態で、朝からずっと放置されています」
場所と車の特徴を伝えた。
すると警察からは、
「こちらでは今のところ、その車について通報は確認できません」
との返答。
その言葉を聞いて、急に不安になった。
事故なら、普通は誰かが通報する。
レッカーを頼むなら、何時間もそのままにしないはず。
もしかして、
「盗難車……?」
そんな考えが頭をよぎった。
もちろん、勝手に決めつけることはできない。
そこで私は車には触らず、写真だけ残した。
SNSにも、
「この車に心当たりがある人はいませんか?」
と情報を投稿した。
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