「家の中まで水が入ってる……どうしよう」
朝、リビングへ入った瞬間、私は完全に固まった。
昨日まで普通だったフローリングの上に、数センチほどの水が広がっていた。
窓際からテレビ台の前まで、床一面が鏡のように光っている。
子どものおもちゃもすぐそばにあった。
頭が真っ白になった。
「タオルで拭けばいい?」
「家具を動かす?」
「ブレーカーは?」
何から手をつければいいのか分からない。
幸い、避難できる場所だけは確保していた。
私はまず子どもを抱き、必要最低限の荷物だけ持って家の外へ出た。
水の中で電化製品に触るのが怖かったので、無理に片づけるのもやめた。
安全な場所から、部屋全体をスマホで撮影した。
床の水位。
テレビ台。
家具の脚。
壁際。
濡れたカーペット。
時計が映るように動画も残した。
それから管理会社へ電話した。
「室内まで浸水しています」
担当者は最初、
「こちらではすぐ対応できません」
と事務的だった。
私は泣きそうになった。
でも電話を切らず、
「被害状況は全部写真に残しています。水はまだ引いていません」
と伝えた。
その後、市の窓口と保険会社にも連絡。
保険会社からは、
「片づける前に、できるだけ被害状況を記録してください」
と言われた。
そこで初めて、
「写真を撮っておいてよかった……」
と思った。
午後になって水は少しずつ引き始めた。
しかし安心したのも束の間だった。
フローリングの一部が浮き、壁紙の下まで湿っていた。
見た目以上に被害が大きかった。
翌日、管理会社の担当者と業者が確認に来た。
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