予定日が近づくにつれ、夫の健一と私、絵里は、何よりも義母・和子の存在を警戒していた。健一の出張中に陣痛が来るかもしれない。その時のために「陣痛タクシー」を確実に登録しておいたのだ。しかし和子は強引に押しかけてきて、自分の車で送ると言って聞かなかった。「得体のしれないタクシーなんかに乗せない。このおばあちゃんが孫を病院に連れて行くのよ」。
先月ガードレールにこすったばかりの車で。彼女の執拗な押し付けは、単なる親心ではなく、孫の「出生の瞬間」を自分だけの功績にしたい、という強い自己顕示欲から来ているように思えた。

「でもお母さん、陣痛タクシーはプロだし、安全だよ」
「ダメだめ! それに、もし破水してシートを汚したら…」
「ビニールシート敷いておくから大丈夫ですよ」
「とにかく私が送る! 連絡したらすぐに迎えに行くからね」
押し問答の末、陣痛が実際に始まったあの日、私は仕方なく彼女に連絡した。
玄関先には既に手配したタクシーが待機していた。すると、和子がやってきて運転手に「今日は必要ない」と帰らせてしまったのだ。彼女の勝手な行動に私は呆然としたが、収縮の間隔が詰まり始めていた。もう彼女の車に乗るしか選択肢がなかった。
「さあ、乗りなさい。安全運転で行くから任せて」
車はゆっくりと走り出した。だが、和子の運転は妙にそわそわしており、赤信号で停まるたびに私の方をちらりと見た。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=IQJdT3tq5_s&t=377s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]