1年前の12月29日。
その日は、本当なら少しだけ希望のある日になるはずだった。
入院した初日、先生から「体調が落ち着けば、お正月に数時間だけ外出してもいいですよ」と言われていた。私たちはすぐに外出届を出した。
娘も私も、その日を心待ちにしていた。
けれど、願いはかなわなかった。
娘の体調は思うように回復せず、外出の許可は取り消された。
医学の知識がない私が見ても、状態が厳しいことは分かった。
娘はきっと怒るだろうと思った。
いつもなら、楽しみにしていた予定がなくなると機嫌を直すまで時間がかかる。だから私は、どんな言葉で説明すれば傷つけずに済むのか、ベッドのそばで何度も考えていた。
ところが、娘は私の顔を見て静かに尋ねた。
「ママも一緒に病院で年越しするんでしょ?」
「もちろん。ずっと一緒にいるよ」
そう答えると、娘は少し笑った。
「それならいいや」
責めることも、泣くこともなかった。
その代わり、私たちは病院の中でできる“最高の年越し”を計画した。
歌番組を最初から最後まで見る。
トランプで何度も勝負する。
『孤独のグルメ』の再放送も全部見る。
食べたいものや、退院したら行きたい場所の話もした。
外へ出られないなら、この病室を世界で一番楽しい場所にしよう。
2人で知恵を出し合っているうちに、娘の表情が少しずつ明るくなった。
その顔があまりにも可愛くて、私はスマートフォンを向けた。
「1枚だけ撮らせて」
娘は痩せていた。顔色も決して良くなかった。
それでも、カメラを見つめる瞳は驚くほど澄んでいた。
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