「何の呪いよ、これ……」
ポストから取り出した水道料金の通知書を見た瞬間、私は思わずつぶやいた。
請求予定額は、12万5136円。
普段の水道代は、2か月で8000円前後。それが突然、15倍近い金額になっていた。
通知書を見直すと、今回の使用水量は504㎥。前年の同じ時期は42㎥なので、10倍以上の水が使われた計算になる。
料理、洗濯、入浴以外に特別な使い方はしていない。
私は検針ミスを疑い、すぐに水道局へ電話した。
ところが職員から告げられたのは、意外な言葉だった。
「検針値に間違いはありません。漏水している可能性があります」
さらに、地中など発見が難しい場所の漏水なら減免対象になる場合があるが、目で確認できる設備からの漏水は対象外になることがあるという。
私は電話を切り、家中を確認した。
キッチン、洗面所、トイレ、浴室、洗濯機。
蛇口はすべて閉まっており、床にも水はない。
「では、504㎥もの水はどこへ消えたの?」
不安になり、屋外の水道メーターを見ると、家中の蛇口を閉めているのに小さな表示が動き続けていた。
やはり、どこかで水が流れている。
家の周囲を歩いていると、裏庭から「ジャバジャバ」という音が聞こえた。
音の先にあったのは、10年以上前に壊れて使わなくなったソーラー給湯器のタンクだった。
本体の劣化した部分から、水が勢いよく噴き出している。しかも給水バルブは、開いたままだった。
私は慌ててバルブを閉めた。
水音が止まり、メーターの動きも止まった。
つまり、使っていないはずの設備へ水が供給され続け、破損したタンクから何週間も流出していたのだ。
修理業者に確認してもらうと、タンクは内部まで劣化しており、再使用は難しい状態だった。私は給水管を完全に切り離し、設備そのものも撤去することにした。
その後、水道局へ漏水箇所の写真と業者の確認書を提出した。しかし、この自治体の基準では設備本体から確認できる漏水に該当し、今回の料金は減免されなかった。
最終的に、12万5136円は全額自己負担となった。
「これだけあれば、ブランド物の財布でも買えたのに」
通知書を見ながら、思わず苦笑した。
高い授業料だったが、それ以来、月に1度はすべての蛇口を閉め、水道メーターが動いていないか確認している。使わなくなった設備も、つないだまま放置しないようにした。
異常な水道料金は、通知書が届くまで気づけないこともある。
静かな裏庭で流れ続けていた水は、音より先に、12万5136円という数字で私へ警告してきたのだった。