「なんや、オバハン。関係ないやろ」
公園へ駆けつけた私を見るなり、中学生の1人が鼻で笑った。
近所の人から「次男くんが年上の子たちに囲まれている」と連絡を受けたのは、夕方のことだった。
急いで向かうと、遊具のそばに中学生が4人。その前で、小学生の次男がうつむいていた。
話を聞けば、次男は突然絡まれ、肩を何度も押されたうえ、頭まで叩かれたという。
「本気じゃないし」
「遊んでただけやん」
中学生たちは悪びれもせず笑っていた。しかし、次男の震える手を見れば、冗談で済ませられる状況ではない。
私は次男を背後にかばい、静かに言った。
「遊びかどうかを決めるのは、やった側じゃない。嫌がっている子を複数で囲んで手を出したら、それはいじめです」
すると中心にいた少年が、一歩前へ出た。
「俺の親、柔術の先生やからな。殴ったらマジでヤバいで」
父親の肩書きを出せば、私が怖がって引くと思ったのだろう。
だが、私も長年護身術を習っていた。だからこそ、武術は弱い相手を脅すためのものではないと知っている。
「それなら、なおさらお父さんに確認しましょう」
私がスマートフォンを取り出すと、少年の笑顔が消えた。
「まず息子に謝って。拒むなら学校と保護者、必要なら警察にも事実を伝えます。目撃した人もいます」
後ろで笑っていた3人も黙り込んだ。
私は怒鳴らなかった。ただ、次男から聞いた内容、目撃者の名前、時刻をその場で記録した。次男の肩に残った赤みも写真に収めた。
少年たちは渋々「ごめん」と口にしたが、私はそれだけで終わらせなかった。学校へ事情を連絡し、保護者にも必ず伝えてもらうよう頼んだ。
数時間後、家のインターホンが鳴った。
玄関に立っていたのは、昼間の少年と父親だった。
父親は深く頭を下げた。
「息子が本当に申し訳ないことをしました。柔術をやっている人間の名前を脅しに使ったことも、情けなくてなりません」
隣にいた少年は、昼間とは別人のように小さくなっていた。
そして次男の前に立つと、震える声で謝った。
「怖い思いをさせて、ごめんなさい。
もう絶対にしません」
父親は、今後は学校とも話し合い、息子をきちんと指導すると約束した。後日、ほかの3人の保護者からも謝罪があり、公園で次男に近づかないことが確認された。
次男はようやく肩の力を抜き、私の手を握った。
「お母さん、来てくれてありがとう」
その一言を聞いた瞬間、引かなくてよかったと思った。
本当の強さは、誰かを押さえつける力ではない。
間違いを認めて謝る勇気と、怖がる子どもの前に立ち、最後まで守り抜く覚悟なのだ。