「担当者が休みなので、分かりません」
ハイエースの車検とアルファードの名義変更についてディーラーへ電話したところ、受付の女性は同じ言葉を繰り返した。
担当者が休みなのは仕方がない。しかし、車検の予約期限も必要書類も、店舗で確認できないという。
「代わりに分かる方はいませんか?」
そう尋ねても、返ってきたのは「分かりません」だけだった。
その冷たい対応を聞いた瞬間、2年前の出来事が頭をよぎった。
ハイエースを車検へ出した際、店舗スタッフが車を移動中に壁へ接触させ、後部フェンダーを傷つけたのだ。
当時は長い付き合いもあり、担当者が何度も謝ったため、「もういいですよ」と済ませてしまった。だが傷は今も残り、見るたびに苦い気持ちになる。
今回も黙って引き下がれば、何も変わらない。
私は電話口で怒鳴り続けるのをやめ、応対した時刻と内容を記録した。そして車の傷、2年前の入庫票、当時のメッセージをそろえ、店舗へ向かった。
受付で店長との面談を依頼し、資料をテーブルに並べた。
「感情的な苦情を言いに来たのではありません。2年前の事故と、今日の対応について、事実を確認してください」
店長は最初、「当時の担当者でなければ分からない」と言いかけた。
そこで私は、事故直後の写真と「こちらの移動中に接触させました」と書かれたメッセージを示した。
さらに、今日の通話履歴と質問事項をまとめた紙も差し出した。
店長の表情が変わった。
約20分後、店内の記録から当時の入庫報告が見つかった。そこには、店舗側で接触事故を起こしたことと、修理の案内が完了していなかったことが記されていた。
店長は深く頭を下げた。
「事故後の対応を曖昧なまま終わらせ、今回も十分な案内ができませんでした。申し訳ありません」
店舗側は傷の状態を改めて確認し、補修について正式に話し合うことになった。車検の日程と名義変更の必要書類も、別のスタッフがその場ですべて説明してくれた。
後日、ハイエースの傷は店舗負担で補修され、担当者も変更された。
電話対応をしたスタッフからも、「確認せずに分からないと繰り返してしまった」と謝罪があった。
私は金銭や特別待遇が欲しかったわけではない。
求めていたのは、事実を確認し、客の質問に責任を持って答えることだけだった。
2年間、見るたびに引っかかっていた傷が消えた日、ようやく気持ちにも区切りがついた。
理不尽な対応には、大声よりも記録が効く。
写真、入庫票、メッセージ、通話履歴。
静かに並べた4つの証拠が、「分かりません」で閉ざされた扉を開いたのだった。