「最後くらい家族だけで過ごしたい」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが静かに崩れ落ちた。
十一年間、私は夫・高文のために生きてきた。
病に倒れた彼を支え、仕事を続けながら病院へ通い、入院費を払い、必要な手続きをこなし、少しでも苦痛が減るようにと身の回りの世話を続けてきた。
妻として当然のことだと思っていた。
見返りが欲しかったわけではない。
ただ、一緒に乗り越えていけると信じていたのだ。
しかし、余命三ヶ月と告げられた夫の病室で、私を待っていたのは感謝の言葉ではなかった。
「あなたには最後を見届けてもらわなくていい」
そう言った高文の隣には、義母がいた。
そして義母は、まるで私を追い払うことが当然だと言わんばかりに、手にした塩を私の足元へ撒いた。
「家族だけで見送るわ。あなたはもう必要ないでしょう」
さらに高文まで笑いながら続けた。
「俺、他人に看取られたくないんだよな。最後くらい家族水入らずで過ごしたい」
一瞬、耳を疑った。
他人?
私が?
十一年間、あなたのそばにいた私が?
病気になったあなたを支え続けた私が、家族ではないというのか。
胸の奥にあった悲しみは、やがて冷たい怒りへ変わっていった。
「分かったわ」
私は静かに答えた。
「そこまで言うなら、私もあなたたちの望み通りにする」
その瞬間、私は決めたのだ。
もう妻としてではなく、本当の意味で“他人”として接することを。
私の名前は悦子。
五十二歳になるまで、私は真面目に働き続けてきた。
本来なら、仕事も生活も落ち着き、自由な時間を楽しめる年齢だった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=TCDJ-HoOQLM,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]