愛娘が去ったのは、緩和ケア病棟に来て六日目の未明のことでした。あたりが静まり返る中、彼女は痛みも苦しみもなく、ただ静かに息を引き取ったのです。最初は実感が湧かなかった。何もかもが夢のようで、現実として受け入れることができなかったのかもしれません。前日、すでに二度、覚悟を決めていたからか、私の心には深い冷静さがありました。
それでも、現実味が感じられず、心のどこかで「まさか」と思う自分もいました。しかし、彼女が旅立った瞬間、私の心にはただ静かな安堵が広がりました。
私が冷静でいられた理由は、彼女がもう苦しみから解放されたことを知っていたからだと思います。父が涙を流しながらその場に立ち尽くしているのを見て、私は娘に語りかけました。「お父さん、大丈夫だよ。もう彼女は苦しんでいないんだ。天国で先に行っているだけだから、私たちもいつか必ず会えるよ。」その言葉が、少しでも父の心を楽にしたのかもしれません。
その後、看護師が愛娘の遺体を優しく連れて行き、まるで新生児を扱うかのように沐浴させてくれました。娘が清められ、静かに安置されるために冷たい部屋へと運ばれていきました。
その部屋は温かな灯りとろうそくで飾られ、柔らかな光の中で横たわる彼女は、まるで眠りについたかのようでした。その瞬間、私は彼女がもう苦しみから解放されたことを実感し、心の中に安らかな気持ちが広がったのです。
娘との最後の別れを終えた後、私は部屋に戻り、あまりにも疲れ果てて、うたた寝をしてしまいました。夢の中では、何気ない日常の風景が広がっていました。
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