引っ越し当日、担当者が差し出した請求書を見て、私は自分の目を疑った。
事前に受け取っていた見積もりは8万円だった。それなのに、その場で渡された請求書には13万円と書かれていた。
「見積もりと金額が違いますよね」
そう聞くと、担当者は少し困った様子で書類をめくり始めた。
「養生費と、階段の追加料金、それから荷造り資材費が加算されておりまして」
どれも、事前の見積もり時には一切説明されていなかった項目だった。うちは一階の部屋で、養生が必要な階段など存在しない。にもかかわらず、伝票にはそう記載されていた。
その場で口論になっても仕方がないと思い、私は作業自体は続けてもらいながら、支払いは見積もり通りの8万円のみとし、残りは後日本社に確認すると担当者に伝えた。担当者はその場では特に反論せず、「承知しました」とだけ答えた。
数日後、本社の担当者から折り返しの電話があった。
「この度は、ご不便をおかけして申し訳ございません」
そう詫びたあと、担当者が説明した事情は、私が想像していたものとは少し違っていた。実はその現場担当者は入社したばかりで、研修中にオプション項目の入力を誤り、別の現場向けの請求書のテンプレートをそのまま使ってしまったのだという。
上長の確認も不十分なまま、そのフォーマットが私の家にも適用されてしまったらしい。
「意図的なものでは、決してございません」
本社の担当者はそう繰り返し、正しい金額である8万円で確定させる旨を伝えてきた。すでに支払っていた分との差額精算もすぐに終わり、後日、お詫びとして粗品が届いた。
腹は立ったが、詐欺のようなものを疑っていた分、単純なミスだったと分かって、少し拍子抜けした気持ちも残った。
今でもその会社を使い続けているが、見積書は必ず写真に撮って残すようにしている。