朝、目を覚まして腕を見ると、また小さな青あざができていた。場所はいつも同じ、右腕の内側だった。
最初にできた時は、どこかでぶつけたのだろうと思っていた。けれど、二日目も、三日目も、まったく同じ位置に同じような大きさのあざが現れた。
夫に聞いても「知らないよ、寝てる間のことだし」と首を振るだけだった。もちろん夫を疑っているわけではない。
ただ、原因が分からないまま毎朝あざが増えていくのは、想像以上に気味の悪いことだった。
大きな病気の可能性も頭をよぎったが、いきなり病院に行くのも大げさな気がして、私はまず記録をつけてみることにした。ノートに、起きた時間、寝る前にしたこと、寝る時の体勢、前日の出来事を書き留める。単純なことだが、他に何ができるかも分からなかった。
五日分の記録がたまった夜、私は改めてノートを見返した。すると、あざができていた日には、ある共通点があった。前日の夜、決まって右腕の下にスマートフォンを置いたまま眠っていたのだ。充電しながらそのまま寝落ちしてしまう習慣が、いつの間にかできていた。
半信半疑のまま、その夜は意識してスマートフォンを腕の下に置かないようにして眠った。
翌朝、腕を見ると、あざはできていなかった。
念のため、その後も数日間同じように気をつけて眠ってみたが、あざが現れることはなかった。分厚いケースの角が、寝返りのたびに同じ場所に当たっていたのではないか。医師に相談したわけではないので、はっきりとした原因とは言い切れない。それでも、記録をつけたことで、少なくとも大きな心配をせずに済んだのは確かだった。
今でも寝る前には、スマートフォンを腕から少し離れた場所に置くようにしている。あの数日間の不安は、思いのほか単純な習慣が原因だったのかもしれない。