祖母の十七回忌は、母方の親戚が久しぶりに集まる、数少ない機会だった。
普段ほとんど付き合いのない親戚も多く、私は名前を聞いても、誰が誰なのかすぐには分からなかった。
その中に、母のいとこにあたる男性がいた。
祖母の妹の息子だという。
これまで一度も会ったことがなく、最初は軽く挨拶を交わしただけだった。
法要が終わり、皆で食事をしていたときだった。
その男性が母のほうを見て、ふとこんなことを言った。
「あなたのお父さんのことは、うちの母からずっと聞いてました。今もどこかで元気にしてるといいですね」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
けれど、母の反応を見て、すぐに祖父の話だと気づいた。
母は箸を持ったまま動かなかった。
さっきまで昔話をして笑っていた叔母たちも、誰も口を開かない。
祖父は、私が生まれるより前に家を出たきり、戻ってこなかった。
母がまだ20代だった頃のことだという。
詳しい事情は聞かされていない。
子どもの頃、一度だけ、
「お祖父ちゃんは、どうしていないの?」
と母に尋ねたことがある。
そのとき母は、普段とはまるで違う表情をして言った。
「その話は、もう二度としないで」
それ以来、25年間。
家の中で祖父の名前が出ることは、ほとんどなかった。
それなのに今日初めて会った親戚が、祖父について「今も元気だといい」と言った。
まるで、祖父が失踪したあとも生きていたことを知っているような言い方だった。
食事が終わるのを待って、私はその男性を庭先で呼び止めた。
「さっきの祖父の話、もう少し聞いてもいいですか」
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