「たかが3万円で、家族みたいな顔をしないでください」
生活が苦しいという息子夫婦に、現金3万円を渡したときのことだった。
嫁は封筒の中を確認すると、礼を言うどころか、吐き捨てるようにそう言った。
私は隣にいた息子を見た。
「あなたも同じ考えなの?」
息子は目をそらしたまま、何も答えなかった。
その沈黙が、嫁の言葉よりも胸に刺さった。
ああ、私は家族ではないのだ。
そう思った瞬間、不思議なくらい気持ちが冷静になった。
息子夫婦が住んでいるマンションは、亡き夫と私が老後のために購入した私名義の物件だった。結婚当初、「貯金ができるまで」という約束で無償で貸していた。
さらに、駐車場代、車の任意保険、スマートフォンの家族契約まで私の口座から引き落とされていた。
毎月の負担は合計約9万円。
それでも、家族だからと思って何も言わずに支えてきた。
翌日、私は通帳と契約書を机に並べ、専門家にも相談した。感情的に追い出すのではなく、必要な手続きを確認したうえで、息子夫婦に書面を送った。
マンションの無償使用は3か月後に終了。
駐車場と任意保険は契約者を変更。
スマートフォンも指定日までに自分たちの名義へ移すこと。
数日後、息子から慌てた様子で電話がかかってきた。
「母さん、急に何なんだよ。家族だろ?」
私は静かに答えた。
「私は家族みたいな顔をしてはいけないそうだから、家族として続けていた援助を整理しただけよ」
電話の向こうで息子が黙り込んだ。
その後ろでは、嫁が「脅しでしょ。どうせ何もできない」と叫んでいた。
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