平日の午後6時12分、私は仕事を終えて帰宅するため、駅から電車へ乗った。
車内は混雑しており、座席はほぼ埋まっていた。
乗車してすぐ目に入ったのは、優先席へ横になっている少年だった。
年齢は中学生くらい。
赤い帽子を深くかぶり、靴を脱ぎ、スマートフォンを操作していた。
頭で1席、腰で1席、伸ばした脚でもう1席。
1人で3席すべてを使っていた。
眠っているのなら体調が悪い可能性もあると思い、最初は声をかけなかった。
しかし少年は画面をスクロールし、時折ゲームの映像を見ている。
周囲の乗客も気にしていたが、誰も何も言わなかった。
2駅先で、杖をついた高齢の女性が乗ってきた。
女性は空席を探したあと、少年の前に立った。
「すみません。1人分だけ空けてもらえますか?」
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