夜勤明けの朝八時過ぎ。
私は重い体を引きずるようにして、ようやく自宅の玄関を開けました。
一晩中、職場のパソコン画面と向き合い、システム更新のトラブル対応を続けていました。五十代の体には正直こたえる仕事です。それでも私は、この家を守るために黙って働き続けてきました。
玄関を開けた瞬間、鼻を刺激したのは焼き魚の香ばしい匂いと、甘辛い煮物の香りでした。
「朝食、作ってくれたのね……」
そう思ったのも束の間でした。
ダイニングテーブルを見ると、夫の工事と義母の春江が食べ終えた食器が並んでいました。
大きな焼き魚の骨。
綺麗な卵焼きの皿。
彩り豊かな野菜の煮物。
それらはすべて、私が前日の出勤前に二人のために準備しておいた料理でした。
しかし、私の席に置かれていたものを見た瞬間、足が止まりました。
そこにあったのは、欠けた古い茶碗。
中には炊飯器の底に残ったような、冷たく硬くなったご飯。
そして、その真ん中に小さな梅干しが一つ。
箸すら置かれていませんでした。
「……私の分は、これですか?」
思わず呟くと、台所で洗い物をしていた春江が振り返りました。
そして、鼻で笑ったのです。
「夜中まで働いたって、大した稼ぎじゃないんでしょう?」
冷たい声が朝の静かな空気に響きました。
「稼ぎが少ない人は、その冷や飯で十分よ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられました。
しかし、私は怒鳴りませんでした。
三十年間、家族のために我慢してきた私には、もう感情をぶつける気力すら残っていなかったのです。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=3C0Rd5LKUSg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]