「ママ、今日こそ出る気がする!」
歯医者へ向かう途中、小学1年生の長男は、治療のことより診察後の“お楽しみ”に夢中だった。
通っている歯医者では、診察が終わると子どもが1回だけガチャガチャを回せる。
普通なら歯医者は嫌がるものなのに、長男はいつも妙に前向き。
「今日は何が出るかな」
そう言って診察台へ向かう姿を見ながら、私は単純にガチャガチャが好きなんだと思っていた。
その日も無事に診察終了。
先生に「よく頑張ったね」と褒められ、長男は一直線にガチャガチャへ向かった。
コインを入れる。
ハンドルを回す。
ガチャガチャ……。
ポトン。
カプセルが落ちた。
長男はすぐに開けた。
ところが、中身を見た瞬間。
さっきまでニコニコしていた長男が、突然動かなくなった。
手のひらをじっと見つめたまま、完全に固まっている。
「どうしたの?」
ハズレだったのかなと思った。
すると長男は周りをキョロキョロ確認し、私の耳元に顔を近づけた。
そして小さな声で、
「……やっと出た」
「え?」
「大当たり……!」
手のひらに乗っていたのは、小さな子ども用の指輪だった。
ピンクや黄色のお花がついた、可愛らしいおもちゃのリング。
私はまだ意味が分からなかった。
でも歯医者を出た瞬間、長男は我慢できなくなったように飛び跳ねた。
「やっっっと出た!」
「やっっっと出たー!」
そして私の前に立ち、少し照れながら手を差し出した。
「ママ、これあげる」
「私に?」
「うん」
指輪を受け取ろうとすると、長男は首を振った。
「違う。つけるの」
そう言って、小さな指で私の手をつかんだ。
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