床へ落ちた書類の表紙には、整形外科の名前と手術日が書かれていた。
俺は慌てて薬の袋を拾った。
「すみません。事情も知らずに、ひどい言い方をしました」
女性は左手だけで書類を受け取り、ゆっくり首を振った。
「いいんです。バッグが当たっていたことに気づかなかった私も悪いので」
話を聞くと、女性は数日前、自宅の階段で転び、右手首を骨折したらしい。
その日の午前中に手術を受け、家族の迎えを頼めなかったため、電車で帰宅している途中だった。
本来なら翌日まで入院する予定だったが、病院の都合で午後に退院が決まった。
急な話だったため、遠方に住む娘も仕事を休めなかったという。
編み込みのバッグには、入院中に使った衣類と洗面道具が入っていた。
膝の上には薬、診察書類、途中で買った食料。
腕を曲げられず、荷物棚まで持ち上げることも、床へ置いた物を拾うこともできなかった。
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