俺は、自分がどれほど愚かな人間だったのかを、本当に理解したのはすべてを失った後だった。
結婚してから十年。妻の美咲は、いつも変わらず俺の帰りを待っていた。
仕事で疲れて帰宅すれば、玄関には明かりがついている。テーブルの上には温かい料理が並び、時計を見ると、いつも決まった時間だった。
「お疲れさま。今日はあなたの好きな煮物を作ったよ」
美咲は毎日、そう言って笑っていた。
だが、その優しさに俺は甘えていた。
俺には、三年間続けていた秘密があった。
浮気だった。
最初は会社の飲み会で知り合った女性との軽い関係だった。刺激が欲しかっただけ。家庭が嫌になったわけではない。そんな言い訳を自分に言い聞かせながら、俺は少しずつ道を踏み外していった。
愛人との時間は楽しかった。妻には見せない自分を出せる気がした。若い頃のような気持ちになり、俺はそれを「本当の幸せ」だと勘違いしていた。
一方で、美咲は何も知らないように見えた。
いや、知らないふりをしていたのかもしれない。
俺が深夜に帰宅しても、美咲は責めなかった。
「仕事、大変なんだね」
そう言って、冷めてしまった料理を温め直してくれた。
俺はその姿を見るたびに、少しだけ罪悪感を覚えた。
しかし、その罪悪感から逃げるように、また愛人のもとへ向かった。
そして、人生で最も愚かな日を迎えた。
その日は妻が外出すると聞いていた。俺は軽い気持ちで愛人を家に連れ込んだ。
「大丈夫。妻は帰ってこない」
そう思っていた。
自分がどれほど残酷なことをしているのか、その時の俺には分かっていなかった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=kl5Od-S_LuE&t=837s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]