俺と妻・沙耶は、結婚五年目の節目にと二泊三日の夫婦旅行へ出ていた。温泉街の静かな夜、湯気の向こうで彼女がふっと笑い、「こういう時間、ずっと欲しかったんだよね」と言った声が、帰路の車内でもまだ耳に残っていた。
しかし――旅の余韻が消えるより早く、現実は容赦なく踏み込んでくる。
自宅最寄りの駅前、深夜のコンビニへ寄った帰り道だった。
街灯の薄い光の下、黒いワンボックスが路肩に停まり、そこから四人の男が降りてくる。金のネックレス、派手な指輪、笑っているのに目が笑っていない顔。近づいてくる足取りだけで分かる。「一般人」を見下し慣れた連中だ。
「お、奥さん美人じゃんw いいなぁ、おっさん」
背筋が冷えた。俺は反射的に沙耶を背中側へ庇う。元特殊部隊――そう名乗れば格好がつくが、俺がそこで学んだのは“勝ち方”ではなく“生き残り方”だ。争いを避けられるなら避ける。それが最優先だと骨の髄まで叩き込まれている。
「すみません、急いでるんで」
俺はあくまで低く、刺激しない声で言った。だが男たちは距離を詰め、酒とタバコの匂いをぶつけてくる。
「おっさんは帰れw 奥さんだけ残せよ。な? ちょっと遊ぶだけだって」
沙耶の肩がわずかに震えた。いつもなら、誰にでも柔らかく接する。店員にも、近所の子にも、病院の受付にも、丁寧に頭を下げる――そんな温厚な人間だ。俺はその彼女の不安を見て、余計に冷静になろうとした。
「妻は帰します。関わらないでください」
その瞬間だった。
一番前にいた男が、俺の胸を手のひらで乱暴に押した。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=v0js6WxZXAk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]