息子が初めてアルバイトを始めた時、私は少し心配していた。
今まで家の中では、まだまだ子どもっぽいところがあったからだ。
朝はなかなか起きない。
部屋は片付けない。
何を言っても「分かってる」と返すだけ。
そんな息子が、外で働いて責任を持てるのだろうか。
正直、少し不安だった。
でも、息子は思っていた以上に頑張っていた。
毎日決まった時間に起きて、準備をして出かける。
帰ってくると疲れた顔をしながらも、「今日はこんなことがあった」と仕事の話をするようになった。
私はそれを聞きながら、少しずつ変わっていく息子を感じていた。
そして、初めての給料日。
その日は特に何も言わなかった。
きっと自分の好きなものを買うのだろうと思っていた。
初めて自分で働いて得たお金だ。
欲しいものを買えばいい。
友達とご飯に行ってもいい。
私はそう思っていた。
ところが、その日の夜。
息子が部屋から出てきた。
手には小さな封筒を持っていた。
「母さん」
少し照れくさそうな顔をして、息子は言った。
「これ」
私は何か分からず受け取った。
「何?」
そう聞くと、息子は目をそらしながら答えた。
「初給料」
一瞬、言葉が出なかった。
封筒を開くと、中には何枚かのお札が入っていた。
「え……?」
私は思わず息子の顔を見た。
「これ、自分で使いなさいよ」
そう言った。
「せっかく初めてもらった給料なんだから」
すると息子は小さく笑った。
「いいんだよ」
「今まで色々してもらったから」
その言葉を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。
私はいつも、親が子どもに与えるものだと思っていた。
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