マンションに住んでいると、ある程度の生活音や生活習慣の違いは受け入れなければいけないと思っている。
足音。
掃除の音。
洗濯の時間。
お互いに生活している以上、完全に迷惑をかけないことは難しい。
だから私は、今まで多少のことなら気にしないようにしてきた。
しかし、どうしても気になることが1つあった。
それは、上の階の住人の洗濯物の干し方だった。
その人はよく大きなシーツをベランダに干している。
洗濯をこまめにしていること自体は悪いことではない。
むしろ清潔にしようとしているのだと思う。
ただ、その干し方が問題だった。
シーツを手すりから大きく垂らして干すため、下の階に住んでいる私の部屋側まで布が見える状態になる。
以前はもっと下まで垂れていた。
風が吹くたびに大きな白い布が揺れる。
そのたびに視界の端に入ってきて、正直落ち着かなかった。
「これ、うちのベランダのものだったかな?」
一瞬そう錯覚するほど近く感じることもあった。
そして一番困ったのは、水滴だった。
洗ったばかりのシーツなのかもしれない。
でも、しっかり水が切れていない状態で干されると、下へ水滴が落ちてくる。
その先には、私の部屋の手すりがある。
そこに干している洗濯物へ水が跳ねることが何度もあった。
せっかく洗濯したものが、上から落ちてきた水で濡れる。
そのたびに「また洗い直しか」とため息が出た。
もちろん、相手に悪意があるとは思っていない。
もしかしたら、自分の家では普通の干し方なのかもしれない。
でも、集合住宅では自分の部屋だけではなく、下や隣に住む人への影響も考える必要があると思う。
私は以前、一度管理会社へ相談した。
「洗濯物に水がかかって困っています」
「シーツがかなり下まで垂れてきています」
状況を説明した。
管理会社から注意してもらえることになったが、その後も大きく変わることはなかった。
そして今も、同じようにシーツは干されている。
もちろん、洗濯をするなと言いたいわけではない。
シーツを干すこと自体は自由だと思う。
ただ、少しだけ位置を調整する。
少しだけ下の階への影響を考える。
それだけで、お互い嫌な思いをせずに済むのではないかと思ってしまう。
マンションでは、壁1枚、床1枚を隔てて知らない人同士が暮らしている。
だからこそ、ほんの少しの気遣いが大切なのだと思う。
今日もベランダを見ると、また白いシーツが風に揺れていた。
私はただ、普通に洗濯物を干して、安心して暮らしたいだけなのに――。