夕方、いつものように自転車置き場に向かうと、契約している番号の場所に、自転車がなかった。
代わりに、地面に一枚の貼り紙が置かれていた。
「無断駐輪のため、管理組合にて撤去いたしました」
先月、正式に契約して番号札をもらったばかりの場所だった。
すぐに管理組合の事務所に向かい、事情を説明した。
対応してくれた担当の男性は、名簿をめくりながら、少し困った顔をした。
「この番号、別のお名前で登録されていますね」
名簿には、たしかに別の住人の名前が書かれていた。
「先月、たしかに自分の名前で申し込みをしたはずなんですが」
担当者は、申込書の控えを一緒に探してくれた。
しばらくして、控えの束の中から、私の名前が書かれた申込書が見つかった。
日付を見ると、私の申し込みのあとに、同じ番号で別の住人からも申し込みが受け付けられていた。
「番号の空き確認が不十分なまま、二重に受け付けてしまったようです」
事務担当者のミスによる、番号の重複登録だった。
システム上、あとから登録されたほうの名前が優先されて表示され、私の自転車が「無登録」として扱われてしまったらしい。
「撤去した自転車は、今、保管場所に移してあります。すぐにお返しします」
保管場所に案内されると、自転車は少し土埃をかぶった状態で置かれていた。
サドルの下には、購入時につけてもらった防犯登録のシールが、そのまま貼られていた。
担当者は深く頭を下げ、翌月分の駐輪料金を無料にすると申し出てくれた。
自転車を引き取って帰る途中、同じ番号で登録されていたという住人と、廊下ですれ違った。
お互い会釈だけして、それ以上の言葉は交わさなかった。