朝礼が終わったあと、上司に別室へ呼ばれた。
「あなたの、新人への指導が厳しすぎるという声が、いくつか出ています」
まったく心当たりがなかった。
「具体的に、誰からどんな声が出ているんでしょうか」
そう尋ねても、上司は「複数の意見が集まった結果として」とだけ答え、詳しい内容は教えてくれなかった。
その週のうちに、担当していた新人の指導係を、別の社員に交代することになった。
理由もはっきりしないまま、私は担当を外された。
数日後、指導していた後輩の一人から、業務用チャットに一通のメッセージが届いた。
「先輩、大丈夫ですか。今回の件、私は何も言っていません」
その一文だけを見て、少し安心する一方で、では誰が声を上げたのか、という疑問が残った。
思い切って、後輩に直接聞いてみることにした。
「何か知ってることがあれば、教えてほしい」
後輩は少し言いにくそうに、こう話してくれた。
「実は、私たちの指導とは別に、以前この部署にいた別のチームで、指導方法をめぐる問題があったらしいんです」
数か月前、別のチームで、指導係と新人の間にトラブルがあり、それが人事部への相談につながっていたという。
私自身とは、直接関係のない出来事だった。
「今回の見直しは、そのチームの件をきっかけに、部署全体で指導方法を確認する流れになったみたいで」
つまり、私個人への具体的な苦情があったわけではなく、部署全体の方針見直しの一環として、たまたま私の担当も対象になった、というのが実際の経緯らしかった。
上司にその点を確認すると、はっきりとは認めなかったものの、「個別の苦情というより、全体の見直しの一環です」とだけ答えた。
結局、指導係には戻れないまま、私は別の業務を任されることになった。
後輩とは、廊下で会うたびに、以前と変わらず言葉を交わしている。
あの日、誰が何を言ったのか、今も正確なところは分からないままだ。