「次に子どもが走り回る音が聞こえたら、警察を呼びます!」
週末の夕方。
買い物から帰った私は、玄関に貼られた一枚の紙を見て足を止めた。
青いペンで、乱暴な文字が並んでいる。
「ここは公園ではありません」
「他の住人がいます」
「静かにしてください!!」
確かに、我が家には子どもが二人いる。
元気に笑うこともある。
時には、注意しても足音を立ててしまうこともある。
だから最初は、こちらにも気づかない迷惑があったのかもしれないと思った。
だが、紙を読み返すうちに強い違和感を覚えた。
貼り紙を書いた隣人が主張していたのは、その日の午後1時から3時までの騒音だった。
その時間、家には誰もいなかった。
子どもたちは朝から祖母と一緒に出かけ、戻ったのは午後7時過ぎ。
私も仕事で留守にしていた。
無人の部屋で、誰が走り回っていたというのか。
私は貼り紙を写真に残し、隣人へ事情を説明した。
「その時間、子どもたちは外出していました」
すると相手は、疑うように私を見た。
「親なら、子どもをかばって嘘くらいつくでしょう」
耳を疑った。
さらに隣人は、マンションの住民グループへ書き込んだ。
「上の家は子どもを放置している」
「何度注意しても改善しない」
「管理会社には退去も含めて対応してほしい」
まだ一度も直接確認していないのに。
私たち一家は、いつの間にか“迷惑住人”にされていた。
廊下ですれ違う人の視線まで変わった。
子どもは、
「僕たち、家にいちゃダメなの?」
と不安そうに聞いた。
その言葉で、私は決めた。
感情的に言い返すのではなく、事実だけを積み上げよう。
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