「今すぐ、その11円を捨てなさい!」
結婚式が終わった夜。
ご祝儀袋を整理していた私の手元へ、義母が勢いよく腕を伸ばした。
袋に入っていたのは、三万円と11円。
一万円札が3枚。
その横に、10円玉と1円玉が置かれていた。
「結婚祝いに小銭を入れるなんて、非常識にもほどがあるわ」
義母は鼻で笑った。
「不吉よ。あなたたちの結婚を馬鹿にしているんじゃない?」
袋に書かれていた名前は、大学時代からの友人・健太だった。
派手な付き合いをする人ではない。
けれど、私が困った時には必ず手を差し伸べてくれた。
そんな彼が、嫌がらせで小銭を入れるとは思えなかった。
「何か理由があるんじゃないでしょうか」
私がそう言うと、義母は親戚たちの前で声を上げた。
「11円に、どんな立派な理由があるの?」
「こういうところに、その人の育ちが出るのよ」
さらに義母は、健太を「貧しい友人」と決めつけた。
「あなたは人を見る目がないの」
「今後は付き合いをやめなさい」
「そんな人を、この家へ入れないでちょうだい」
私は腹が立った。
だが、理由を知らないまま反論しても、義母は聞かない。
夫が止めようとしても、
「あなたは黙っていなさい」
と押し切った。
義母は11円をつまみ、ゴミ箱へ投げようとした。
その瞬間。
私はご祝儀袋の内側に、わずかな膨らみがあることに気づいた。
「待ってください」
義母の手を止め、袋の厚紙を開いた。
そこには、小さく折り畳まれた手紙が挟まっていた。
私は親戚たちが見守る前で、ゆっくり紙を開いた。
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