「障害があるなら、接客なんかさせるなよ」
その一言で、店内の空気が凍った。
駅前のカフェで、私は取引先との打ち合わせまで時間を潰していた。
レジには若い男性スタッフが立っていた。
動作は少しゆっくりだったが、注文内容、金額、支払い方法を一つずつ丁寧に確認している。
決して雑な接客ではなかった。
だが、私の前に並んでいたスーツ姿の男は、何度も舌打ちした。
「遅いんだよ」
男性スタッフは頭を下げた。
「申し訳ございません。ご注文をもう一度確認いたします」
すると男は、レジ横の掲示に気づいた。
そこには、障がい者雇用への理解を求める店からのお知らせが貼られていた。
男は鼻で笑った。
「ああ、なるほど。だから遅いのか」
さらに声を大きくした。
「普通の店員を出してくれない?」
「こういう人は裏方に置けばいいだろ」
「客に迷惑をかけてまで接客させる意味あるの?」
スタッフの顔が強張った。
それでも彼は、感情を表に出さなかった。
店長が奥から出てきた。
「他のスタッフへ代わります。ただし、従業員を侮辱する発言はお控えください」
男は名刺を取り出し、カウンターへ叩きつけた。
「俺はこれから大きな商談なんだよ」
「御社の本部にも知り合いがいる。一通メールすれば、この店員くらい簡単にクビにできるぞ」
私は名刺に書かれた会社名を見て、思わず目を細めた。
その男は、30分後に私の会社へ提案に来る予定の担当者だった。
私はあえて名乗らなかった。
男がどこまで自分をさらけ出すのか、見届けることにした。
彼は受け取ったコーヒーを乱暴にテーブルへ置いた。
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