フロントの方は、ラブクロムと私の顔を交互に見ながら、丁寧に返事を待っていました。
当然です。
ホテル側からすれば、宿泊者とは違う名前が刻まれた忘れ物を、そのまま渡すわけにはいきません。
私は小さな声で答えました。
「はい、間違いなく私のものです。その名前は……私の名前ではなくて……」
そこで一度、言葉が止まりました。
普通なら、家族や恋人から贈られた物だと説明すれば済むのでしょう。
しかし、このラブクロムに刻まれている「Kento」は、私が自分で選んで入れた名前です。
スタッフさんが首を少し傾けたので、もう隠しようがありません。
「その……推しの名前を刻印しているんです」
言ってしまいました。
公演後の高揚感がまだ残るホテルのロビーで、大切なくしに推しの名前を入れていることを、見ず知らずのフロントスタッフへ自白する私。
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