結婚して半年。
私は、離婚の準備が整うまでの間、夫の吉尾を「いないもの」として扱うことに決めた。
人間だと思うから傷つく。
期待するから裏切られた時に苦しくなる。
ならば、最初から空気だと思えばいい。
そう考えられるようになるまで、私は長い間、夫の機嫌に振り回され続けていた。
私の名前は夏美、二十九歳。
吉尾とは大学の同級生だったが、学生時代はほとんど接点がなかった。
二年前、同窓会で偶然隣の席になったことがきっかけで話すようになり、価値観が合うと思って交際を始めた。
そして、私たちは結婚した。
吉尾は次男、私は姉妹の長女だったため、彼は私の家の婿養子になってくれた。そのことには本当に感謝していた。
しかし、結婚生活が始まって三か月ほど経った頃、少しずつ歯車が狂い始めた。
きっかけは、吉尾の仕事での失敗だった。
職場で小さなミスをした吉尾は、それを隠そうとしてしまったらしい。しかし、同僚の女性社員に気づかれ、上司に報告されて厳しく注意された。
その時、私がかけた言葉が気に入らなかったという。
正直、何を言ったのか私は覚えていない。
ただ、吉尾は昔から都合の悪いことをあまり話さない人だった。
言葉で反論することが苦手な彼が選んだ方法。
それが「無視」だった。
最初は、突然口を聞かなくなった吉尾に私は戸惑った。
「どうしたの?体調悪いの?」
「喉でも痛いの?話せない理由があるの?」
何度聞いても返事はない。
食事を作っても、
「ご飯できたよ。今日は好きなハンバーグにしたよ」
そう声をかけても、返ってくるのは沈黙だけ。
「いただきます」も「ごちそうさま」もなかった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=c56QRlNdNUQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]