そのハガキを開いた瞬間、私は首をかしげた。
「え……私の携帯、ここにあるんだけど?」
手に持っているスマホを確認する。
電源も入る。
写真も撮れる。
いつも使っている私の携帯だった。
なのに、携帯会社から届いた案内には、
「お客様名義の端末が警察署に届けられています」
という内容が書かれていた。
しかも、保管場所は兵庫県内の警察署。
電車で向かわなければならない距離だった。
「私、何を落としたの?」
頭の中は疑問だらけになった。
最近、スマホを失くした記憶なんてない。
毎日使っている。
保育園の連絡もする。
写真も撮る。
財布と同じくらい大切に持ち歩いている。
でも、ハガキには確かに私の名前。
受理年月日は2026年9月9日。
その数字を見て、私はその日の行動を必死に思い返した。
9日は朝から雨予報の日だった。
私はいつものように子供を保育園へ送った。
その後、近所の雑貨屋へ寄った。
そこで買ったものといえば……
モモンガのぬいぐるみ。
「かわいいな」
そう思って買った、小さなぬいぐるみだけ。
その日は大雨になるかもしれないと思っていたから、寄り道も最小限だった。
「もしかして、その時に何か落とした?」
バッグの中を何度も確認した。
財布。
鍵。
スマホ。
全部ある。
じゃあ警察に届いている“端末”とは何なのか。
もしかして、昔使っていた携帯?
子供のおもちゃ?
壊れた古いスマホ?
それとも……全く別のもの?
考えれば考えるほど気になってしまう。
家族に話すと、
「詐欺じゃないの?」
と言われた。
確かに最近は、警察や携帯会社を装った詐欺もある。
「受け取りに来てください」
と言って、個人情報を聞き出す手口かもしれない。
でも、ハガキには自分の名前。
警察署の情報。
携帯会社からの正式な案内のように見える。
「本当に届いているなら確認したい」
そう思った。
翌日、私は念のため携帯会社の公式窓口へ確認することにした。
担当者に事情を説明すると、
「確認いたしますので少々お待ちください」
と言われた。
数分後。
返ってきた答えに、私はさらに混乱した。
「確かに、お客様名義の端末が届けられている記録があります」
「ただ……現在お持ちの携帯とは別の端末の可能性があります」
と言われた。
では、一体いつ?
どこで?
何を落としたのか。
9月9日の雨の日。
保育園へ向かった道。
雑貨屋で手に取ったモモンガのぬいぐるみ。
私の記憶にない“もう1つの端末”。
私は翌日、警察署へ向かうことを決めた。
受付で名前を伝えた時、
「こちらですね」
と差し出された物を見た瞬間……
私は思わず声が出そうになった。
「え……これ、私の……?」