その日の18時頃。
私は家族と一緒に、近所のくら寿司へ食事に行った。
いつものように注文をして、届いた汁物を手に取った。
温かい出汁の香り。
疲れていたこともあり、何も疑わず口に運んだ。
一口。
二口。
気づけば、半分ほど飲んでいた。
その時だった。
汁の中に何か黒っぽいものが浮いていることに気づいた。
「……え?」
箸でゆっくり持ち上げた瞬間、手が止まった。
それは、死んだコオロギだった。
頭の中が真っ白になった。
「今まで飲んだ分は大丈夫なの?」
「いつから入っていたの?」
いろいろな不安が一気に押し寄せた。
私は慌てて店員さんを呼んだ。
「すみません、この中に虫が入っています」
写真もすぐに撮った。
証拠を残しておかなければと思ったからだ。
店員さんは確認しに来て、驚いた表情を見せた。
しかし、その場で言われた言葉は、
「衛生管理を徹底します」
というものだった。
もちろん、改善してほしい気持ちはある。
飲食店で異物混入が起きること自体、完全になくすのは難しいのかもしれない。
でも、実際に口にしてしまった側からすると、簡単に終われる話ではなかった。
もし気づかず全部飲んでいたら?
もし子供が飲んでいたら?
そう考えると、怖さが込み上げてきた。
帰宅してからも、あの光景が頭から離れなかった。
写真を見るたびに、
「本当に入っていたんだ」
と現実を突きつけられる。
私は大げさに騒ぎたいわけではなかった。
ただ、同じことが別のお客さんに起きないでほしかった。
翌日、私は店舗へ改めて連絡した。
注文した時間。
商品名。
異物の状態。
写真。
飲んだ量。
すべて伝えた。
すると、担当者は状況確認を行うと言った。
調理場や提供までの流れを確認し、原因を調べる必要があるとのことだった。
私はそこで初めて、
「写真を撮っておいてよかった」
と思った。
もし証拠がなければ、
「本当に入っていたのか」
という話になっていたかもしれない。
今回の件で感じたのは、飲食店への信頼は小さな確認の積み重ねで作られているということだった。
お店側も一人ひとりのお客さんも、安心して食事できる環境を守ることが大切だと思う。
数日後。
店舗から改めて連絡が入った。
「確認した結果についてお話があります」
その言葉を聞いた私は、静かにスマホを握った。
そして担当者が伝えた内容に、私は思わず黙り込んだ……。