十二月の冷たい風が吹き込む夕方。
私は玄関のドアを開けた瞬間、言葉を失った。
「……え?」
そこにあるはずだったソファも、テレビも、カーテンも、結婚して七年間少しずつ揃えてきた家具も、何一つ残っていなかった。
広がっていたのは、生活の温もりが完全に消えた空っぽの部屋。
まるで、私という存在だけがこの家から切り離されたようだった。
「なに……これ……」
震える足でリビングへ進むと、床の上に一通の封筒だけが置かれていた。
その瞬間だった。
背後から、聞き慣れた足音が響いた。
振り返ると、そこにはスーツケースを引いた夫が立っていた。
しかし、いつもの優しい表情はなかった。
冷たいほど落ち着いた笑顔。
そして、その口から出た言葉は、私の心を凍りつかせた。
「彼と一生お幸せに」
「……え?」
「君が望んでいた人生だろ?」
「ち、違うの……待って!話を聞いて!」
夫は静かに私を見つめた。
「全部知っているよ」
「彼とのマンションも、高級レストランも、二百万円の時計も……俺の独身時代の貯金八百万円を使ったことも」
その瞬間、私の頭の中が真っ白になった。
私は三十五歳。
中堅商社で営業事務として働いていた。
夫は三十七歳、大手商社勤務。
結婚して七年。
都内の賃貸マンションで、周囲から見れば穏やかで幸せな夫婦生活を送っているように見えた。
夫は優しい人だった。
朝は自分からゴミを出し、疲れて帰ってきても私の料理を「美味しい」と言ってくれる。
何の不満もない生活。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=Pc4Fr3UD-9M&t=4s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]