「あなたには一円たりとも渡すつもりはないわ」
義母は車椅子に座ったまま、冷たい笑みを浮かべてそう言い放った。
「この家も、一億円以上ある財産も、全部和弘夫婦に残す。あなたには何もあげないからね。文句ないでしょう?」
その言葉を聞いた瞬間、私の胸の奥で何かが静かに崩れ落ちた。
財産が欲しかったわけではない。
十年間、私は一度も遺産を期待して義母の世話をしてきたわけではなかった。
ただ、亡くなった夫の最後の願いを守りたかった。
「母さんのことを頼む」
病室で弱々しくそう言った夫の言葉を、私はずっと胸に刻んできた。
だから、どんなに辛くても、どんなに傷つけられても、義母の介護を続けてきたのだ。
それなのに――。
「分かりました」
私は静かに答えた。
「私は財産なんて必要ありません。今日でこの家を出ていきます。どうぞお元気で」
義母は目を見開いた。
「……え?」
まさか私が本当に出ていくとは思っていなかったのだろう。
しかし、この瞬間から私の人生は大きく変わり始めた。
私は藤井絵里子。
以前は夫の健司と、五歳の息子・健太郎と三人で幸せに暮らしていた。
夫は父親から引き継いだ中古車販売会社を経営する、真面目で優しい人だった。
仕事が忙しくても、帰宅すれば必ず健太郎をお風呂に入れてくれた。
「お父さん、まだかな」
玄関で夫の帰りを待つ息子の姿を見るたび、私は幸せを感じていた。
しかし、そんな穏やかな生活には一つ問題があった。
夫の会社の経営が少しずつ悪化していたのだ。
原因は、夫の兄・和弘だった。
夫の父が亡くなる直前、私は病室に呼ばれた。
義父は真剣な表情で言った。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=vmEjAQ5ERTg,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]