私と夫が出会ったきっかけは、鉄道だった。
大学時代、夫の部屋に置かれていた珍しい鉄道模型を私が見つけた。
父が鉄道会社に勤めていた影響で、私も昔から鉄道が好きだった。
そこから話が弾み、交際が始まり、やがて結婚した。
新婚旅行も鉄道を見るために九州へ行った。
そこで記念に買った模型は、私たち夫婦にとって特別な1箱になった。
やがて息子が生まれた。
優しい子だった。
家事を手伝い、友達が困っていれば助ける。
小学2年生になった頃、我が家では断捨離がちょっとしたブームになった。
息子も古い服や本、おもちゃを自分で整理していた。
その頃、私が夫の部屋も片付けることになった。
夫は大切な鉄道模型を息子の部屋の押し入れへ移した。
「息子にはちゃんと伝えておいてね」
私はそう言った。
しかし夫は、伝えるのを忘れてしまった。
学校から帰った息子は、押し入れに見慣れない黄色い箱を見つけた。
そして自分の物だと思い込み、他の不要品と一緒にゴミ置き場へ持っていってしまった。
夜、夫が探した時にはすでに回収後だった。
「なんで捨てたんだ!」
夫は激怒した。
息子は、
「ごめんなさい。そんなに大切なものだって知らなかった」
と謝った。
それは、新婚旅行で買った模型だった。
私は、
「もう許してあげて」
と夫を止めた。
夫もその場ではそれ以上責めなかった。
けれど、それから父と息子の関係は変わった。
息子は父を怖がるようになった。
夫も笑わなくなった。
さらに数日後には、自分が長年集めてきた模型まで次々に捨て始めた。
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