市立中学校の事務室で契約職員として働き始めて、今年でちょうど20年になる。生徒の転出入手続きから教材費の管理まで、任される仕事は年々増えていった。同僚からも「あの人がいないと回らない」と言われるほどだった。
3月のある日、教頭に会議室へ呼ばれた。告げられたのは、「来年度からの契約は結ばない」という一言だった。理由を尋ねると、「予算の都合で、事務職員の枠をひとつ減らすことになった」とだけ説明された。
それ以上の詳しい話は、何度聞いても返ってこなかった。校長にも相談してみたが、「教育委員会からの通達なので」と、やはり明確な理由を教えてもらえなかった。
これまで一度も契約更新で問題になったことはなかった。評価面談でも、毎年「継続を推薦する」という言葉をもらっていた。それだけに、突然の雇い止めには納得がいかなかった。同僚たちも一様に驚いており、中には「予算削減なら、もっと勤続年数の短い人から検討するのが普通なのでは」と、こっそり首をかしげる人もいた。それでも組織の決定として受け入れるしかなく、最終出勤日に向けて、少しずつ荷物をまとめ始めた。長年使っていた文房具や、生徒からもらった手紙などを、ひとつひとつ箱に詰めていく作業は、思っていた以上に気持ちが沈むものだった。
最終出勤日の前日、教頭室に確認書類を届けに行ったときのことだった。教頭が席を外していた間、机の上に、見覚えのない人事評価シートが一枚置かれているのが目に入った。他の職員の評価シートが、たまたま出しっぱなしになっているのだろうと思い、気にせず用件を済ませて部屋を出ようとした。
けれど、シートの名前欄がふと目に入った瞬間、足が止まった。
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