その日は、いつもより早く仕事が終わった。
嫌な予感があったわけではない。ただ、妙に静かな胸騒ぎだけが、帰り道の途中からずっと続いていた。
玄関の鍵を開け、家に入った瞬間だった。
「……あっ、ダメ、そんなの……」
浴室の方から、はっきりとした女の声が聞こえた。
私は一瞬、動きを止めた。
次に聞こえてきたのは、男の低い笑い声だった。
「ここ、誰もいないんだろ?」
その言葉で、すべてが繋がった。
ゆっくりと靴を脱ぎ、音を立てないようにリビングへ向かう。
頭の中は妙に冷静だった。怒りよりも先に、“確認”が必要だと理解していた。
リビングのソファに腰を下ろす。
そしてそのまま、浴室と廊下へ続くドアの前に、ソファを静かにずらした。
重たい音が床に響く。
これで、内側からは出られない。
完全に閉じ込めた状態を作り上げた瞬間、私は息を吐いた。
浴室の中では、まだ気づいていないのか、笑い声が続いている。
しばらくして――。
「……あれ? なんかドア開かないんだけど」
女の声が、少しだけ焦りを含み始めた。
男の声も続く。
「おかしいな、さっきまで普通だったのに」
その瞬間、私はスマートフォンを取り出した。
通話履歴を確認しながら、ゆっくりと画面をタップする。
彼女の名前を選び、発信。
浴室の中から、着信音がかすかに響いた。
「……え? これ誰から?」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=JfhGrXUR-Ww,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]