その朝、空気は妙に澄んでいた。
いつも通る住宅街の角を曲がった瞬間、私は自分の目を疑った。
自宅のガレージ前に置いてあるはずのロードバイクが、見知らぬ女性の手によって引き出されていたのだ。
しかもその女性は、まるで当然のようにサドルにまたがろうとしている。
「……何をしているんですか?」
私の声に気づいたのか、女はゆっくりと振り向いた。
「何って、見れば分かるでしょ。これ、私の自転車なんだけど?」
一瞬、頭が真っ白になった。
そのロードバイクは、数年前から大切に乗り続けている特注品だ。フレームの傷、ハンドルの角度、サドルの擦れ具合――どれも自分の身体に合わせて調整してきた“相棒”のような存在だった。
「それ、俺のです」
はっきりと告げると、女性は鼻で笑った。
「は? 何言ってるの? 私が昨日ここに停めたのよ」
昨日? ここは私の家の敷地だ。そもそも他人が“停める”ような場所ではない。
しかし女性は一歩も引かない。
「証拠あるの? これ、私のだから」
その強気な態度に、周囲の住民が少しずつ視線を向け始めていた。
私は深く息を吐いた。
ここで言い争っても埒が明かない。
「じゃあ、乗ってみろよ」
私は静かにそう言った。
女性は一瞬だけ表情を歪めたが、すぐに強気な笑みを浮かべた。
「いいわよ。乗れば分かるんでしょ?」
そう言うと、彼女はサドルにまたがり、勢いよくペダルに足をかけた。
次の瞬間だった。
ガタンッ――
不自然な音とともに、自転車は前に進まなかった。
女性の体はバランスを崩し、慌ててハンドルを握り直す。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=NPkW93945YQ,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]