築40年の一軒家にエアコンを付け終わった時、新婚のご夫婦にとんでもないことを言われました
その日、私は朝から汗をかいていた。
気温は三十五度を超える真夏日。照りつける太陽の下、工具箱を抱えて現場へ向かうだけで、シャツは背中に張りついていた。
私は四十二歳。十五年間勤めていた会社が倒産し、今は家電量販店から依頼を受けるエアコン取り付けの下請け業者として働いている。
決して華やかな仕事ではない。
しかし、家には二人の子供がいる。五歳の娘と、まだ小さな息子だ。二人に食事をさせ、生活を守るためなら、どんなに暑くても、どんなにきつくても、仕事を断るわけにはいかなかった。
午前中の現場は、タワーマンションだった。
依頼主は新婚の若いご夫婦。部屋は広く、家具も洗練されていて、私のような作業員が入るには少し場違いに思えるほどだった。
玄関の前で、奥様が私を上から下までじっと見た。
そして、私が靴を脱ごうとした時、静かな声で言った。
「そのまま入るんですか?」
私は一瞬、意味が分からなかった。
「ええと……」
「スリッパとか、持っていないんですか?」
足元を見れば、作業で汚れた靴下が見えていた。
胸の奥が、ひやりと冷えた。
私は何も言い返さず、近くのコンビニへ走った。そして新しい靴下を買い、トイレで履き替えた。
「失礼しました」
頭を下げて、作業を始めた。
工事が終わるまで、私は一度も顔を上げなかった。
午後の現場は、築四十年の一軒家だった。
依頼主は、またしても新婚のご夫婦だった。
玄関のチャイムを押すと、奥様が出てきた。
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