娘が小学校へ入学した春。
最初の頃は、毎日楽しそうに学校の話をしていた。
「今日は友達と話したよ」
「先生が褒めてくれたよ」
ランドセルを背負う姿を見るだけで、私は成長を感じていた。
ところが、GWが終わった頃から少しずつ様子が変わっていった。
朝になると、準備が進まない。
制服を着たまま、玄関の前で動けなくなる。
「どうしたの?」
聞いても、娘は小さな声で、
「行きたくない……」
と言うだけだった。
最初の私は、深刻には考えていなかった。
新しい環境に慣れるまで時間が必要なのだと思っていた。
「最初はみんな大変だよ」
「学校に行ったら楽しいこともあるよ」
私はそう言い続けた。
娘を責めたいわけではなかった。
むしろ、乗り越えてほしかった。
この先の人生で、嫌なことから逃げるだけになってほしくなかった。
だから私は、毎朝必死だった。
でも、娘の表情は日に日に苦しそうになっていった。
そして7月。
ある朝、いつものように学校へ行く準備をしている時だった。
娘は突然、何も言わず紙を差し出してきた。
「これ読んで」
そう言って、下を向いた。
そこに書かれていたのは、娘の小さな文字だった。
まだ上手に書けない字で、何度も消した跡があった。
そこには、自分の気持ちが一生懸命書かれていた。
「わたしは、いきたくないんです」
その一文を見た瞬間、胸が苦しくなった。
でも、続きには違う気持ちも書かれていた。
「ちゃんとりゆうがあります」
「ひとりでがんばってるからです」
「でも、くるしくていえません」
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