座る場所がなく、杖をついた高齢女性まで立っているのに、その男性だけが3人掛けの長椅子を1人で占領していた。
両脚を通路へ大きく投げ出し、体は座席の中央。
左右には誰も近づけない。
病院帰りの患者で混み合う薬局だった。
私はしばらく我慢したが、高齢女性の脚が震えているのを見て声をかけた。
「すみません。少し脚を引いて、隣を空けてもらえませんか?」
すると男性は顔も上げずに答えた。
「空いてるんだから、勝手に座ればいいだろ」
だが、あの座り方では横へ入ることさえできない。
男性はさらに脚を広げ、聞こえるようにため息をついた。
その時、受付の女性がカウンターを出てきた。
そして立ったまま待っている患者の人数と、男性が座っている長椅子を確認した。
「こちらは1人用の席ではありません」
静かな声が薬局内へ響いた瞬間