隣の家との細い隙間が、まさか毎日のストレスの場所になるとは思いませんでした。
うちの2階には、風通しのいい小さな窓があります。朝、洗濯物を干す前にその窓を開けると、ふわっと空気が入ってきて、少しだけ気持ちが軽くなる。そんな何でもない時間が、私は好きでした。
ところがある日、その窓を開けた瞬間、むわっとタバコのにおいが入ってきたんです。
「あれ?」
最初はたまたまだと思いました。でも翌日も、その次の日も、同じ時間になると煙のにおいがする。窓の外をそっと見下ろすと、隣の家の人が、うちとの境目のすぐそばに灰皿を置いて、そこでタバコを吸っていました。
もちろん、隣の人の敷地内です。だから最初は何も言えませんでした。
「自分の家の中で吸ってるわけじゃないし」
「敷地内なら仕方ないのかな」
「こっちが窓を閉めればいいだけなのかな」
そう思って、私は毎回そっと窓を閉めていました。
でも、困ったのは洗濯物です。2階の部屋に干していたタオルや服に、うっすらタバコのにおいがつくようになりました。
子どもが「このタオル、なんかにおいする」と言ったとき、さすがに胸がざわっとしました。
しかも不思議だったのは、隣の家には裏側にも同じくらいのスペースがあることです。裏は生活道路に面していて、風も抜けるし、人の窓の真正面でもありません。
なのに、なぜかうちとの間。
私は何日も悩みました。直接言ったら角が立つ。近所付き合いもある。
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