給料日まで、あと5日。
財布の中には1万8千円と小銭だけ。家には米もあるし、冷凍庫に少しだけ作り置きもある。麦茶のパックも残っている。贅沢をしなければ、所持金がほぼゼロになっても、なんとか乗り切れる。
そう思っていた日の昼休み、回転寿司で一緒に働いているシングルマザーの同僚から、声をかけられた。
「ごめん……2万円、貸してもらえないかな」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「2万円?」
彼女は小さくうなずいた。回転寿司のほかに、郵便局と焼肉屋でも働いている人だ。いつも疲れた顔をしているけれど、子どもの話になると少しだけ笑う。真面目に働いているのは、私も知っていた。
「電気代とガス代が払えてなくて。明日までに払わないと止められるって……給料日の15日には必ず返すから」
2万円。
私にとっても大金だった。
貸せば、私の手元はほとんどなくなる。けれど貸さなければ、彼女の家は電気もガスも止まるかもしれない。冷蔵庫の中身はどうなるのか。子どもはお風呂に入れるのか。夜、暗い部屋で過ごすのか。
頭の中で何度も計算した。
でも、同時に別の不安もあった。
給料日に彼女が2万円を私に返したら、その月の彼女はマイナス2万円から始まる。結局また苦しくなるだけではないのか。もし返せなかったら、職場で気まずくなる。善意で貸したはずなのに、関係まで壊れるかもしれない。
私はすぐに「いいよ」とは言えなかった。
代わりに、静かに聞いた。
「請求書、持ってる?」
彼女は驚いた顔をした。
「え?」
「疑ってるわけじゃないよ。
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